世界的に活躍しているDJに共通している技術の高さとは何だと思いますか?
DJをはじめたばかりの人はプロのDJをみて『繋ぎの技術』、『エフェクト/LOOP等のプレイ』、『パフォーマンス』こういったテクニックに目がいきやすいと思います。しかし、DJの本質はフロアにいるお客さんを踊らせる事です。
私は所謂DJとしては活動していませんが、スタジオや自身の制作でクラブミュージックとは日々関わりますし、クラブのサウンドシステムを組んだり、海外/国内のゲストDJに音響エンジニアとして関わったり、DJの現場も色々な方面からみてきました。
DJ対エンジニアとして関わる時、世界的に活躍しているDJは共通した上手さ/技術を持っているのを毎回感じます。
今回はそんな観点から、上手いDJに必要なテクニックについてまとめてみました。
本質的なテクニックなので完全に習得するには時間がかかるかもしれないですが、習得すればDJとしては確実に1〜2ランクはスキルUPします!!!
本気のDJは必見です!
私の考える『上手いDJ』に必要な技術は下記の3つです。
- フロア鳴りの良い楽曲を聴き取れる耳
- 場を読んで自分の流れを作れる選曲
- サウンドシステムを理解した音量調整
フロア鳴りの良い楽曲を聴き取れる耳
同じイベントでもメインのゲストDJに変わった途端、音が良くなったのを体験した事はありませんか?
イベントによってはゲストDJの時間が盛り上がる様にPAエンジニアサイドでの音量/音質コントロールが入っている場合もあります。しかしエンジニアが特別なコントロールしていない場合でも、上手いDJは抜群の音を出します。
同じ機材に同じサウンドシステム。
ではどうしてこんなにも音質が変わるのでしょうか?
1番の違いはフロアで良い鳴りをする楽曲ばかり持っているからです。
当たり前過ぎてガッカリな答えかもしれないですが(笑)、これを実現するにはエンジニア的に音を聞き取れる耳、優れたモニター環境を持っていないと中々難しい、ハイレベルな技術なんです。
DJはミュージシャンではありませんので鳴らす楽曲の良さがとても重要になってきます。
曲の良さというのは【音楽的な曲の良さ】 歌・メロディーが素晴らしい、コード進行がかっこいい等の視点もあります。
当然この面も重要なのですが、ことクラブミュージックにおいては【音響的な曲の良さ】 つまり楽曲のアレンジやミキシングがフロア鳴りを考えた上での美しい周波数バランスになっているか、がそれ以上に重要になってきます。
やはり初心者のDJの人は【音楽的な曲の良さ】で楽曲を選んでいる人が多い印象があります。
悪い事ではないのですが、どんなにアガる楽曲でも例えば低音の処理がイマイチな楽曲ばかり続けてかかったりすれば踊りに来ているお客さんはフロアから離れていきます。
一流のDJが曲を探す場合、
まず『音響的な曲の良さ』クリアしているかで大きく選別!
ここをクリアしているトラックの中から、歌/メロディーが素晴らしいトラック、無機質なトラック、トライバルなトラック、といった欲しい要素でチョイス!
こういった観点も持って楽曲集めをしていると思います。
私が音響で入る際にはまずゲストDJの方に今日のイベントの傾向にあったバランスの良い曲を鳴らしてもらうようにリクエストします。
優れたDJはその時にチョイスする曲がエンジニアからみても音響バランスが優れていることがほとんど。さらにエンジニアサイドから注文(例えばキックではなくベースが周波数的に下に来ている曲)した場合でもこちらが求めている曲をすぐ選んでくれます。
これはハイレベルな聴き取り能力や楽曲へのエンジニアリング的な理解がある事を意味しています。
では、こういった能力を磨くにはどうすれば良いのか?
その際に自分で『この曲は音が素晴らしい!』『踊りたい!』っと感じる曲は覚えたりメモしておくのです。
最近ではスマホで簡単に録音できますので録音がOKなイベントなら録音しておいて後でDJ仲間に聴かせて曲名を教えてもらったり、曲を音で探すアプリ『Shazam』等を使っても便利かもしれません。
Shazam – 音楽検索 8.2.1(無料)
カテゴリ: ミュージック, エンターテインメント
販売元: Shazam Entertainment Ltd. – Shazam Entertainment Limited(サイズ: 38.6 MB)
全てのバージョンの評価: (12,011件の評価)
iPhone/iPadの両方に対応
また自分の目指しているプロのDJ等が現場でのセットリストをオフィシャルサイトなどで公開している場合もありますよね。そういった場合はそこから曲をチョイスするという方法もあります。
ただやはり現場での鳴りを自分の耳と身体で感じて良い曲を探すのが1番良いと思うので出来るだけフロアに足を運ぶと良いと思います。
②色々な方法で現場で良い鳴りをする楽曲をみつけたら購入しましょう!!!
そして自分のモニター環境で色々な曲と聴き比べてみるのです。この時にフロアでの鳴りも覚えている範囲で良いので意識しつつ、低域、中域、高域、といったバランスにフォーカスをおいて聴いてみましょう。
こういった事を地道に繰り返していくと今まで気が付かなかった音の聴き方が少しづつ身についてきます。そうなってくれば自宅のスピーカーやヘッドホンでもフロア鳴りの良い楽曲が分かるようになってきます。
またどんなに耳が良くてもモニター環境の再生能力が低いと分からない音の違いもあるので、欲が出てきたらスピーカーやケーブル、プレイヤー/インターフェイス等をワンランク上のものにすると良いでしょう。
●DAWソフト等を持っているならトラックメイクにも挑戦していくのも非常に良い事です。
クラブトラックを制作すると音作りや周波数バランス、アレンジ/トラックの構造を理解していきますので、こういった能力のUPに必ず繋がります。
studio dubreelにくるトラックメイカーもトラックメイクをはじめてから楽曲集めの際の視点が変わったという人は多いです。エンジニアリング的な面に自分も関わる事で曲を聴く視点に『音響的な曲の良さ』が加わってくるからだと思います。
場を読んで自分の流れを作れる選曲
これは本当に場数/経験が必要になってくる技術だと思います。
大物DJの場合1人で一晩中プレイするケースもありますが、大体は1人1時間〜2時間程度をプレイして他のDJに繋ぎます。
つまりはじめの数曲は、自分の前のDJが作ってきた流れがどうだったかも判断して選曲する必要がありますし、その日のお客さんがどういったリズムだと盛り上がるのか?歌ものが良いのか?っといったフロアの好みも判断する必要がありますよね。
この選曲に関しては、やはり実際にクラブの現場に足を運んで『選曲とフロアの感触』をたくさん体感して掴んでいくのが1番だと思います。
もちろんプロのDJmixの音源や動画をみて勉強するのも良いですが、mixCDはDAWソフトなどの編集が入っている場合もありますし、お客さんの空気を読んでリアルタイムに選曲が行われていく感覚は弱いと思います。
結局は現場経験を積みまくるのが1番ということになってしますのですが、選曲に関しても知っておくと便利なノウハウはありますので下記にあげたいと思います。
上にも書いたように選曲はお客さんの空気にあわせて選んでいくのが基本になってくるのですが、『選ぶ曲を探す際に事前に準備しておけることはしておく』とより的確に必要なトラックをチョイスすることができると思います。
- 曲の展開(特にキックが抜ける大きめのブレイクの長さや位置)
- 曲の質感(シンセ系/生音系、柔らかめ/固め)
- 歌/声の有無(歌もの/インスト)
- ジャンル(ハウス/テクノ/ジャズ/ロック等)
- 歌詞の世界観
当然曲のすみずみまで覚えておくのが最高ですけど(笑)、多くの楽曲数だと大変になってくるのでポイントをおさえてメモするなり覚えておくと良いと思います。
TraktorやScratchLive等の使ったPCDJであれば、楽曲にコメントがつけれると思いますので、こういったポイントを自分で分かるように簡潔に書いておくと便利ですよね。
例をあげると、キックの抜けるブレイクが2回ある曲なら例えば『KB*2』などとコメントに書きこんでおけば曲をロードする前からブレイクが2回あると判断できますよね。PCなら曲自体ブレイクには事前にCueポイントを打っておけば尚ベストですよね。繋ぎで曲のKeyにもこだわるDJの人は曲ごとにKeyを書いておく人もいますね。
曲に関してのこういった情報をメモする、覚える、方法は人それぞれで良いと思います。
とにかくDJブース内で選曲する段階で曲に関する情報を自分で把握できないとフロアの求めているものにあわせたり、自分の中でテーマをもって流れをつくるにしても良いものは出来てこないと思います。
●メモ/ポイントをもとにテーマやイメージをもって練習してみる
持っている曲に関して上のようなポイントを自分なりに分析しメモしたら、自分の中で何かテーマを持って1時間なら1時間で流れを作ってみましょう。テーマは何でも良いと思います。
- サックス、ピアノ、ボーカル、JAZZYな質感を共通点に繋ぐ
- 生系のハウス→テックな質感のハウスにゆっくりシフト
- 恋愛に関連する歌詞、キーワードを共通点に繋いでいく
MIXの練習は簡単でよいので必ず録音しましょう。
自分のプレイ/MIXは客観的に聴けないケースが多いので録音して客観的に聴くことで、冷静に今のMIXがどうだったかを判断しやすいです。
こうやって実際にMIXしてみると自分がメモしたポイントが実践で使いやすいものになっているかの判断ができますし、テーマを持ってMIXをする事によって大きいスパンで流れを考えながらMIXを作ることの練習になりますよ。
サウンドシステムを理解した音量調整の技術
このスキルを説明する前に、、、あなたはイベントなどでこんな現場に出くわした事がありませんか?
もちろん音量が上がっていけば迫力は出るんですが、これには限界があります。
なぜならサウンドシステムを構成する「ミキサー、音響機材、スピーカー」こういった機材は適正な入力レベルが決まっており、通常エンジニアが全ての機材でベストな入力音量になるように調整し、フロアで良い音が鳴るようにしています。
そういったクラブではDJミキサーに適正な音量レベルが記載されていたりしますが、要するに、その音量で良い音になるようにチューニングされている訳です。
それを無視して音量を上げるとどうなるか?
機材のどこかの段階で音が歪んだり、またスピーカー保護のリミッターが異常にかかり、音が逆にひっこみ迫力がなくなったりと良い事がありません。
MAXまで音量が上がっているが、さらにアゲたいと思いレベルを突っ込む
↓
爆音でさらに音が悪くなり、フロア居るのが辛くなり人が減る
↓
フロアから人が減っていくのをみて焦ってアゲようと音量さらに突っ込んで、、、
という悪循環にハマった経験をした人も多いと思います(私もクラブのライブであります…笑)。
●どんなサウンドシステムでも音量の上限があるわけですが、上手いDJはそこを理解した上で音量を上手くコントロールして盛り上げていきます。
ポイントは人間というのは相対的に音量などを感じる点
分かりやすくいうと、例えば0.5の音量の曲があったとして、
- 前に0.3の曲がかかれば0.5の曲は大きく感じる
- 前に0.75の曲がかかれば、同じ0.5の曲でも小さく感じる
このように感じるわけです。
つまりサウンドシステムのMAXレベルを理解し、そこをDJプレイの音量のトップに設定。
盛り上げていけば音量は上がっていくがトップ音量までいったら、一度作った音量のピークをその後にいかに上手く下げるかを考える。
原理としては非常にシンプルで明快ですよね。まぁ言うは易しで、上手く下げるのは難しいんですが(笑)。
ただ世界的に上手いDJは音量のコントロールも上手い人が多いです。
以前ハウスの大御所DJのフランソワ氏のPAを一度やったことがあります。オープニングDJが1人2時間前後入り、それ以降はフランソワ氏ひとりで朝までのイベント。
彼はリハもなしで本番直前に来てすぐDJブースに入り、前のDJからスイッチ(正直リハなしで大丈夫かね〜っと思っておりました、笑)。
前のDJの時点でもフロアは盛り上がっていて、音量もシステムのMAXぎりぎりまで来ていたのですが、2〜3曲派手な曲で繋ぎながら10分くらいかけて少しづつ音量を下げていき(10分で-3dB位)、突然HIPHOP系のトラックを繋ぎました。
不意打ち気味の選曲でフロアは盛り上がり、そのタイミングでスッと音量を抑え、また新たにハウスで流れを構築していってました。
そのクラブはデジタル機材でサウンドシステム管理していたので、彼の細かい音量コントロールが数値でみれたのは良い経験でしたし、「流石だな〜、これならリハなくてもOKだわ〜」と感心したのを覚えてます(笑)。
他にも何度かゲストDJの音響をした事がありますが、やはり上手いDJは音量コントロールもスキルが高い人が多かったですね。
フロアのテンションは下げず、音量を上手く下げるヒント
- 曲に強いインパクトやフック要素があるものは下げても、テンションはキープされやすい
- テンポやジャンルが違う曲を入れて雰囲気をスイッチしたタイミングで音量もコントロールしてみる
- 楽曲の内容をどんどん派手にしていくが、音量は分からない範囲で徐々に落としていく
- ジャンルによってはDJがマイクパフォーマンスを入れて、パフォーマンスから戻した際に分からない程度少し下げる
- 音量が落ちても盛り下がらない曲はあるので、普段からその視点でも曲をチェックしておく
イメージとしては音量以外にアッパーな要素を持っている曲、インパクトをもたせるパフォーマンス、こういった部分で音量をコントロールするとテンションをキープしたまま音量のコントロールが行えるんではないでしょうか。
もちろん一時的にフロアのテンションを下げたい場合はそのまま下げても問題ないと思います。
理想はフロアのテンションも音量も自由にコントロールできるDJですね〜。相当修行が要りそうですが(笑)。
まとめ
長い間お疲れさまでした。どうだったでしょうか?
一般的な繋ぎやエフェクトの使い方は他でも色々と読めますので、エンジニア視点で本質的なスキルについて書いてみました。
そういった内容だけに知っただけですぐ上達する事ではありませんが、知った状態で場数や現場を踏んでいけばスキルアップに繋がると信じております。
日本の音やパフォーマンスを世界的にヤバイと言わせたい人間として、1人でも多くのDJの上達のヒントになれば嬉しいです〜。